ケーススタディ-敷金返還請求についてまとめてみました。

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敷金返還請求の少額訴訟

借家契約において、敷金の清算をめぐるトラブルが増えています。

敷金は比較的少額である為、少額訴訟において解決するケースが多いものと思われます。

アパートや賃貸マンションを借りるときは、家賃、礼金、不動産業者に対する手数料などを支払い、そして敷金を預けます。

敷金とは、建物賃貸借契約時に賃借人から賃貸人に預託される金銭のことで、貸室の修繕費、滞納家賃などの清算に利用され、残りがあれば返還されるものです。

しかし、敷金が全く返還されなかったり、クリーニング代などに使用され、ほとんど返還されないという場合にトラブルになります。

中でも貸室の明け渡しの際の借主の原状回復義務、つまり、貸室の損耗・損傷が発生した際の原状を回復する借主の義務範囲が問題となるケースが多いようです。

貸室の損耗・損傷が発生するには、以下のケースが考えれれます。

① 建物・設備の自然な損耗や劣化

② 借主の通常の使用、契約書記載の用法の通りの使用により発生した損耗

③ 借主の故意・過失によって生じた汚損・損耗(タバコのヤニ汚れも含まれます)

①や②は借主が普通の生活を送る上で普通に使用し、なお且つ時間の経過により自然に発生するものですので、通常は借主の原状回復義務には含まれないと理解されています。

③については、借主が自己の責任で発生させたものなので、借主が修繕義務を負うことになり、その修繕費は敷金から控除されます。

最近では、契約時に細かく責任範囲を取り決める不動産業者も増えてきましたが、必ずしも細かく取りきめるケースばかりではありませんので、微妙な責任範囲の解釈でもめるケースも多いようです。

そのような敷金の返還を求め少額訴訟を起こす場合には、まず、賃貸借契約が成立していること、契約成立の際に敷金を預託しているということ、契約が終了し賃貸物件を明け渡したことが証明する必要があります。

それらを証明するための証拠としては、以下のようなものがあります。

  • ① 賃貸借契約書
  • ② 重要事項証明書
  • ③ 敷金の預り証
  • ④ 建物・部屋の間取り図
  • ⑤ 敷金の清算書
  • ⑥ 振込金受取り書
  • ⑦ 入居時の部屋の破損個所の写真や明け渡し時の部屋の写真
  • ⑧ 修繕・クリーニングなどの見積書と領収書

①②で賃貸借契約の成立および契約内容の証明

③で敷金の金額と敷金を預託していることの証明

⑤で部屋を明け渡したことと、滞納家賃が無かったことなどを証明

⑦で必要とされる修繕が必要だったかどうかを確認

⑧で修繕の内容などを確認

ただし、あまりにも争点が複雑で相手側からも反論が予想されるケースでは、少額訴訟を提起しても裁判所の判断で通常訴訟に移行されたり、相手側から通常訴訟に移行される可能性もあるので予め注意が必要です。

敷金の清算のトラブル防止の為に、契約時には原状回復の責任範囲の確認を充分行い、入居時や退去時には破損個所や汚れ個所を写真に収めて保管しておくことが重要です。