ケーススタディ-家賃請求についてまとめてみました。

ヘッダー背景

家賃請求の少額訴訟

アパート経営で家賃収入で生活している大家さんにとって、賃借人の家賃の滞納は深刻な問題です。

賃借人が家賃を支払ってくれず、何ヶ月分かの家賃を滞納している場合、大家さんとしては以下の2つの選択肢があります。

①  賃貸借契約を解除して、賃借人に対し貸室の明け渡しを求める方法

②  賃貸借契約は継続し、家賃の支払いを求めていく方法

①の方法を取る場合、すぐに新しい入居者が見つかり、賃料が途切れずに入ってくればいいですが、その賃貸物件によっては、明け渡しを求めてもすぐに新しい賃借人が入居するかどうかという問題もあります。

②の方法を取った場合、賃借人との交渉を重ね、それでも支払いに応じない場合には、訴訟を提起せざるを得ない場合もあります。

しかしながら、通常訴訟を提起した場合、賃貸人が勝訴の判決を得ても、判決では「滞納家賃の全額を支払え」というよな判決しか出ません。

賃借人が滞納家賃を一括で支払ってくれればいいですが、数ヶ月程度の家賃を支払えない賃借人が一括で支払える能力があるのかどうか疑問で、判決が出ても結局は支払われず、強制執行手続まで行う必要が出てくるなど、回収までには時間と費用がかかってしまうということにもなりかねません。

それに対し、少額訴訟の判決では、支払猶予、分割払いを含む判決も認められており、また裁判期日の審理の中で分割で支払うことで双方の合意を得るよう和解も勧められますので、通常裁判のように一括払いの判決よりも分割払いなどでより現実的に回収を行える可能性のある少額訴訟が適していると言えます。

ただし、、少額訴訟を提起しようと思っても、滞納家賃が60万円を超えている場合には、訴額が60万円までの少額訴訟を提起することができませんので、少額訴訟で解決する場合には滞納家賃の額が60万円を超えない、早い段階での提起が必要になってくるかと思います。

少額訴訟では、賃貸借契約の成立、賃借人の家賃支払義務の存在を立証していかなければなりませんが、賃貸物件を借りる際には、ほとんどのケースで不動産業者が仲介し、不動産賃貸借契約書を作成しているはずですので、この点は容易に立証できるものと思われます。

少額訴訟によらない解決方法

賃借人とある程度話し合いが可能で、なお且つ、相手が公証人役場に同行してくれるようであれば、公正証書を作成するという方法もあります。

公正証書は、公証人が作成する契約書で、金銭の支払いについては裁判手続きをしなくても契約違反があれば、ただちに強制執行を行える書類です。

まず、滞納分の家賃の金額を確認し(債務承認)、月々新たに発生する家賃に滞納分を月々いくらか加算して支払うなどの約束をし、これに「執行受諾文言」を付与してもらいます(債務弁済契約)。

これにより、少額訴訟などで判決を得たのと同様の法的効果が発生します。

賃借人も滞納を認めていて、支払いに応じる姿勢を見せているケースでは公正証書を検討してみてもいいかもしれません